身近な人の死の第一発見者になってしまった話

コロナ

さてとポテト。

こんなん書いてたのが四ヶ月ほど前。

その記事とこの記事の件に加え、職場でも身内の不幸二件を聞きかじり、つき合いのない親族も最近亡くなり、日に日により確かな現実になってきた感覚があります。

とあるなにかによって強引にもたらされた、この世代の死期といってもいいのかもしれません。

洗いざらいありのまま書くことでもない(ってゆーかブログに書くことじゃないのかもしれない)ので、フェイクを入れたり濁したりしつつで(※終盤にややショッキングな描写がありますので、今しんどい方はムリに読まない方がいいと思います)。

60~70代の、身内に近い関係性のMさんが亡くなりました。

近年は数ヶ月に一度ぐらいのペースで食事に誘い誘われ、我が家の子どもたちも一緒にご飯を食べるような間柄。

単身者で、日頃から継続的な関わりのある知人も多くはなく、生存確認とか、連れ出すためとか、子どもたちと会うと元気になる感じもあったし、そんな諸々を含めたコミュニケーションって感じですか。

つっても、足が悪くなり始めた直近一年ほどでは、一度か二度。

この辺り非常に難しくて、親族ではないので、あまりデリケートな部分には踏み込めず、なんとなく会話から分かる本人の意思を尊重しながら老いを見守るぐらいしかできることがないのです。

ひと言老いを見守るといっても、この前まで杖なしで普通に歩けてた人がだんだん歩けなくなっていく様とか、こちらとしてもしんどいというか、それでもできることもなくて、もどかしかったりで、どうしても足が遠のくというか、なかなか積極的に関わりづらくなっていく感じでした。

年末年始辺りに食事をして以降、時々思い出しては心配するだけみたいな日々が続いていたのですが、この暑さの中さすがに大丈夫かなと、息子とのプール帰りに寄ってみることにしました。

はい、自転車で行ける距離に住んでいたので、もっとこまめに様子を見に行けただろうと言われればその通りです。

あれこれ全部言い訳っぽくなりますし、たらればはやめましょう。

で、その久々に寄ったのが二週間ほど前。

ピンポンがないのでドアをコンコンしつつ、「Mさ~ん、いますか~!」なんつって息子と二人で呼んでみると、「おぉ~・・」と返事が返ってきました。

待つこと一分、伸ばしっぱなしのヒゲに上半身裸で、どっかの谷の仙人のようなMさんが姿を現しました。

私「生きてましたか?!」

Mさん 「なんとか」

なんつって、玄関先で冗談交じりに世間話。

やせたし佇まいもだいぶ老化してはいましたが、自分で出てきたし、手土産の餃子を渡すと、「ちょうど餃子食いたかったんだよ」なんて、いつものように思ってもない軽口を叩いたり、(少し前からうっすら認知症の気はありつつも)受け答えははっきりしていたので、一応は「生存確認完了」みたいな感じで、そりゃまぁ「もうそろそろ・・・」ぐらいはチラついても、正直この人が一週間後に死ぬイメージは湧きませんでした。

とはいえ昨今の年寄りあるあるで、この猛暑の中エアコンつけてなかったりもして、もうちょい短いスパンで様子は見に来た方がいいかもな、ぐらい。

ここでもなんというか、急に週に何回も私一人で訪ね出したら、Mさん的にも煩わしさを感じるだろうし、っつーか「こ、コイツ、死待ち!?」なんて思わせちゃうかもしれません。

例えば介護施設とかヘルパーとか、酒やめろとか、アレ食えコレ食えなんてのは、言ってもやらないことが明白だし、結局のところ本人にジャマ臭がられない程度に顔を見に行くぐらいしかやっぱりできないんですよね。

もちろん我が家の都合もあって、次に息子がプール行こう!と言ったのが二週間後。

この日は中1娘とママが原宿へ女子ショッピングに出かけていたこともあり、息子の希望でサイゼリヤへ(健康パパですんであまり外食はしませんが、お姉ちゃんとの公平なバランスのためのプチ特別感)。

のんびり食事をしながら、激ムズまちがいさがしを10個クリアして、冷凍ミラノ風ドリア(3食入り)を手土産に、Mさん宅へ向かいました。

例の如く名前を呼び、ドアをコンコン叩いて聞き耳を立てても、返事が返ってきません。

それでも、「生きてますか~」なんつって、息子とドアをガチャガチャしたりしてると、引き戸のガラスと室内側にかけてある白い目隠しカーテンの間に、ハエが飛んでいるのが分かりました。

ここでようやく「もしや?!」がよぎったのです。

引き戸の横の窓があっさりと開き、恐る恐る中を覗くと、電気のついた部屋の真ん中辺りに倒れているMさんの姿。

そこまで間近ではなく顔も見えない位置でしたが、肌の色が赤黒く変色していて、「生命」が失われていることがひと目ではっきり分かりました。

とっさに、「あちゃぁ・・」だったか「うわぁ~・・」だか、なにかしらの小さなため息的なものを発してしまい、直後に浮かんだのは息子への対応です。

息子からは見えない高さだったので、ひとまずMさんがそこに(亡くなって)いることも含め特に声かけはせず、「ママに電話しとくかぁ」とかなんとかつぶやいて、親族の連絡先を知っている妻に電話をかけてヒソヒソと事情を説明しました。

もちろん妻も、エェッ!?って感じ。

すでに亡くなっていることは明らかだったため、救急や警察よりもまず親族に連絡し、その後の対応を委ねた上で、一旦帰宅して親族の到着を待ちます。

こんな文章をわざわざを書いていること自体がその表れな気もするんですが、四十半ばともなると相応に近しい人の死を経験してきたからか、こんな唐突な死との直面にもなぜだかやけに冷静な自分がいまして、(ここまでの文章からも数日経ってますし)この先、私の「思ったこと」中心の、ちょい軽めのノリになります。

数時間後、到着して現場を確認し通報を済ませた親族からの連絡を受けて、第一発見者の私も現場検証に合流。

私の見たところでは、異臭が広がっていたり、無数にハエがたかっていたような様子はなく、短パンの股間が湿っていて排泄物が乾ききっていないような感じもあったので、まだ本格的な腐敗は始まっておらず、経っててせいぜい五日前後ぐらいなんじゃないかなぁなんて、勝手に死亡推定日時を予想したりしてましたが、ふと気づきました。

私、Mさん死亡の第一発見者であり、最終生存確認者でもある可能性が極めて高い重要参考人っつーか、なんなら不審な点がひとつでも見つかったりすれば、サクッと「容疑者第一候補」なのです。

よくよく考えてみれば、その時点でその場にいる人間の中で、本当に自然死であることをすんなり信じられるのは、この目でその姿を一番に確認した私一人だけなんですよね。

警官も刑事も(なんなら私とは交流らしい交流のなかった親族だって)、状況から基本的に「事件性なし」の様子でいても、その線は捨て切ってはいないはずで、そんなことを意識しだすと、ただありのまま話してるつもりなのに、どこか自分の中でも、ミラノ風ドリアがどうとか、二週間前には、餃子持って「生存確認ですよ」なんて言いながら~とか、聞かれてもいない変に具体的なエピソードを交えて、まるで無実をアピールしているかのような、なんとなくわざとらしい供述(そう供述!)になってるような気がしてきたり。

もしかしたら、今これを読んでいる人も、こんなことをわざわざ自分から書き綴る私に疑念を抱いているかもしれません。

しかしそうは言っても本当のことだし辻褄も合ってるので、ひと通り聞かれたことに答えていたら、小一時間で私はお役御免となりました。

あとまぁ余談で、コロナで社会のデタラメさに気づかされた身として、なんかもう世の中全般に対していつもあきらめみたいな気持ちを抱いてるワケなんですけど、警察官とか鑑識の人とか刑事さんとか、日々こんな出来事の中にいて、他人の死やそれを取り巻く人々と接することを仕事にしてる人がいる現実に直面すると、狂ってるのは上から眺めてコントロールしようとするキチガイと、そこを目指すキチガイと、そこに取り入ろうとする哀れな強欲マンたちであって、現場の人たちは誠実に真摯に目の前の自分の仕事に取り組んでるもんやなぁと、なんかまぁ「捨てたもんじゃない感」に包まれました。

とね、なんともしかし私は思いましたよ。

その後、それこそこんなところには書かない方がいいコマゴマしたMさんの生き様の断片を知るに、人間ってのは一人で生きるようにはできてないんですよやっぱ。

(べつにMさん個人のことってワケでなくて)一人で自分の最後と向き合う日々の中、心から信用できる人を作りづらく、本音を言えなかったり、弱音を吐けなかったり、どうでもいいことで笑い合えなかったり、ひと言で言えるもんでもないですけど、色々ひっくるめて、当人の感情として一人だとしあわせに(というか概ね満足した状態で)死にづらいなって。

晩年になればなるほど求めるものは、親戚だろうが他人だろうが、信頼できる人がそばにいることの安心感なんではないかなって。

他人に頼らず一人で生きてきたとして、成功者とまで言わずともそれなりに遺すものがあれば、人生の終盤に差し掛かるにつれ、近づいてくる人が親切であればあるほど「遺産目当て」かのように思っちゃったりもするだろうし、その逆なら、誰にも気にかけられないことへの失望を抱えて過ごす時間になるんですよ。

同じイヤな出来事だって、一人で抱えてイライラするのか、身近な人に笑って話して冗談にできるかだけで全然ちがいますしね。

「覚悟してる」なんて開き直れるのは、体が動くうちだけですよきっと。

ま、人それぞれなのでいいも悪いもありませんけど、少なくとも私は、一人で死ななくて済むように生きていこうと思ってます。

じゃ、おやすむ~!!

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